教えて!AGEのこと

第6回 自分の身体と心に素直に向き合おう

江戸川大学 客員教授
ビューティ・ジェネラリスト
寺山 イク子 氏

 

 皆さんにとって2014年はどんな年でしたか?そして2015年は一体、どのような年にしたいでしょうか?始まったばかりの季節にワクワクしている、反対にあまり上手くスタートがきれていない…、あっという間に時が過ぎていきそうで焦っている…などなど、人それぞれのお気持ちで過ごされているのではないかと思います。
 さて今回は、日々、無意識に向き合っている皆さんの身体と心のお話です。ぜひ今年はじっくりと向き合う時間を作ってみてはいかがでしょうか。時間をかけて、という意味ではありません。外見の話でもありません。ほんの数秒・数分で十分ですから、「意識する」・「気づく」という心がけを持ってみようというお話です。
 私達の身体、といっても細胞の事ですが、去年の今日と今年の今日ではまるで違っているのをご存知でしょうか?身体を構成している細胞、実はたった1つの細胞内に80億個ものたんぱく質があるといわれています。そのたんぱく質は毎日2-3%ずつ新しく入れ替わっています。そうして90日から100日前後、約三ヶ月で体内のたんぱく質は、ほぼ全て入れ替わることに。ですから1年経てばすっかり新しくなるわけですね。

ブームとなった“糖質制限”の落とし穴

 皆さんもご存知の糖質制限、大分、浸透してきているようにも感じますし、一方で永遠のテーマである「ダイエット」、日本では“痩せる”という意味合いが強いのですが、そこに結びついてブームになり、勢いもあるように思います。がしかし、最近のニュースでは、いわゆる“糖質制限しすぎ”、が問題になっていたりもします。ある報道だと、まるで糖質制限が良くないもののような言われ方をしている所もあります。これは一体、何が問題点になっているのでしょうか?
 私が感じるのは、炭水化物以外のものはフリー=何を食べても構わない、という“落とし穴”がそうさせているのではないかということ。ヒトは飢餓状態が長いと、どんなわずかな食べ物でも栄養にしようとして吸収率がアップするようにできています。さらに一部のものに制限やNGが出ると、他でカバーしようとする本能がスイッチオン、暴走しがちになります。つまり、炭水化物にNG(制限)が出ていると、それ以外のものでカバーしようとし、その結果、糖分以外の(良くない)脂質の摂りすぎや食べ過ぎやおこり、カロリーオーバーになっているのではないかと推測するわけです。
 これでは糖質制限も無意味なものになってしまいますし、またこれを糖質制限のせいにされてはたまらないですね。
 アメリカでは、国民の健康上の問題解決策として、脂質の過剰摂取の制限を政府が指導しましたが、結果、脂質にすり替わって国民が摂ったものは(良くない)糖分の高い食べ物や飲み物でした。それらで食を満たす人々が続出し、これまた結果が芳しくない状況が出てしまっています。
 こういう事が、まさに各自の意識のレベルではないかと思うわけです。確かにAGEは体内に少ない・無いほうがいいのですけれど、間違った確信を持って進んでしまうと、本末転倒になりかねません。

糖質過剰時代の中での“気づき”

 「身体は食物で作られる」のは本当です。しかも昔と違って、現代は糖質過剰時代。元々、「糖分」は、貴重な存在だったからこそ位の高い方々に重宝がられ、献上品が生まれ、各土地代々の芸術的甘味(嗜好品)が大事に育てられてきたはずです。
 最近でも、60年代前後の子供達というのは、どこか糖分に飢えていたところがあって、そういう意味でも、大変貴重だったわけです。特にお正月の「お節料理」は、現今のものとは比べるべくもないささやかさだったにも関わらず、ハレのご馳走だったものでした。お重の中にある子供達の大好物といえば、なんといっても“伊達巻”。家族や親戚一同で囲むお重のふたを開ける度、伊達巻の残り数を目の端で確認し、虎視眈々とした記憶をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。お正月はいつにもまして一人っ子が羨ましかった方も多いのではと思います。
 さて、今はどうでしょう。
 例えば朝、カフェによってキャラメルソースたっぷりのコーヒーのラージサイズにシュガーたっぷりのシナモンロールをあたためてもらったとしましょう。素敵なブレックファースト、でしょうか?まるで映画やドラマのワンシーンのようですが、恐らくこれで糖質50gはかたいでしょう(笑)。もうこれだけで約1.5日分の消費量です。食べるなとは言いませんが、毎日の朝食がこれ、または、これに準ずるものでいいのかどうか?
 ではよく聞かれる、体にいいというベジタブル&フルーツジュースやスムージーに代えたら?果物って糖質の高そうなイメージたっぷり、という方もいるでしょう。
 そうなのです。
 そこに気づきがあります!
 店頭にところ狭しと並ぶ“ヘルシー”をキャッチコピーにした飲料類は、一見、とても魅力的に見えます。が、すでに加工され、ビタミンやミネラルなどが含まれずバランスがよくないものも多くあります。その点、果物そのものには、ビタミンやミネラル、そして繊維質などが各々の個性で含まれており、同じ糖質といっても比較にならないのです。
 しかもバランスの良い食べ物ですと、吸収もゆっくりと穏やかですし、一気に飲んでしまうのと、よく噛んでから飲み込むものでは、同じ品でも加工によって急激に血糖値を上げるリスクが違うのです。血糖値を急激にあげない事はAGEを増やさないポイントの一つでしたね?

多量のアルコールは低血糖の原因に

 それから季節柄、飲み会の多い方もいらっしゃるかと思いますが、アルコ―ルを飲んだ時にも気をつけたいものです。多量のアルコールは、正常な人でも低血糖の原因となります。なぜ低血糖のお話をするかというと、AGEと深い関係があるからなのです。
 「とりあえずビール(を一杯)!」
 良く冷えたビールは喉ごしもたまりませんね。この一瞬のために、水分を控えているという声も聞きますが、これも状況によります。
 “空腹”時、急激にアルコールを摂取したとします。すると急激な高血糖値に見舞われます。これでは身体にAGEを作ってくださいと言っているようなものです。そして急激に上がったものは急激に下がりますから、脳がごまかされ、低血糖になったと勘違いして、お腹が空いてもいないのに空いたと思ってしまい、満腹状態でも食べられる状況に陥ってしまいます。なおかつアルコール分解の為、体内は脱水症状となります。この結果、飲み会で、たっぷり飲んで食べたはずなのに、〆のラーメンをスープまでペロリと平らげてしまうことができてしまうのです。
 これでは身体全体がAGE製造機ですよね。さらに睡眠中、身体は悲鳴をあげながら栄養を消化し、余分なものを脂肪へせっせと回していきます。こうして翌朝の胃もたれ、ムクミがでて、かつ喉もかわくのです。
 そして追い打ちをかけるように、まだ胃が空っぽではないのに、1日3食だから!といって、また食べてしまえば、一体、皆さんの身体はどうなってしまうのでしょうか!?
 このような食習慣が頻繁であれば、2週間~1カ月後に、脂肪という名の"貯蓄"はが増え続けるばかり。こんな貯蓄は、皆さんの生活に一切不要です!ですから、バランスと節度を保って、身体と向き合う事が大事ではないかと思います。

自分の“身体と心”を素直に感じる

 さて身体の新陳代謝と同様に、心も変わる・新しくなる力を人はそれぞれ持っています。私達には細胞が生まれ変わっているのを目の当たりに見ることもできませんし、心も全く姿が見えませんが、感じることはできますし、心というのも日々更新しているわけです。
 では心の新陳代謝の力の源は、一体、何でしょうか?
 それは「今、この瞬間を大事に過ごす」事。
 例えば、皆さんの心に直球で響く誰かの一言や心を揺さぶるような素敵な出会い、または動揺する別れ、さらには皆さんが感動した本、心が納得したニュース…などなど。
 人との出逢いや別れはもちろんの事、本であれ、ニュースであれ、全ては「今、瞬間の出来事」です。偶然であっても必然であっても、出逢えた事に敏感になり、皆さんの心に感じていただきたいのです。なぜなら、心と身体は繋がっているからです。自分の身体にも心にも、新陳代謝を促すこと。特に、心はどんな状況であっても意識することが大事です。無意識のままでは、気づかないうちに通り過ぎていってしまいます。
 最近、ストレスを感じる…という方は、一様に肩や腰に痛みを伴っている人が多いと言います。それは心から発せられたシグナルを身体のサインとしてSOSを出しているからなのです。逆もしかり。肩や腰が痛い…という症状のある人は、ストレスがないか思い出してみてください。特にストレス自体は溜めてしまわずに小出しに発散していれば、決して悪者ではありませんが、溜めてよいものではありません。ここにもバランス感覚が必要になってきますね。
 そして何よりも感謝を忘れずに、日々、頑張っている身体と心を素直に感じ、向き合うように心がけることで、ますます豊かで充実した2015年を過ごしたいものです。

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