教えて!AGEのこと

第7回 AGEを減らす調理法

料理家
タカコナカムラ 氏

 

 数年前に、久留米大学医学部の山岸昌一先生と対談する機会がありました。そのとき「AGEを抑えるには、料理方法がポイントになる」と言われましたが、その言葉が私の心にグサッとささりました。
 私は、「ホールフード」を軸に、安全な食、美容や健康によい料理をテーマに料理の仕事をしてましたが、カラダによい食材が料理方法次第ではAGEを作りだしてしまうことを知ったときは大変、ショックでした。
 大げさにいうと、オーガニック食材やブランド鶏肉を使っても、料理方法を間違えると健康にマイナスな料理となってしまうということです。
 その後、山岸先生の書籍やお話を伺う機会を重ねるごとに、AGEの弊害も知り、「AGEをためない料理のメソッド」を多くの人に伝えていきたいと思うようになったのです。
 それをまとめて、この春「AGEためないレシピ」を上梓しました。

AGEをためない調理にあたって

 もともと私は、ダイエットや美容、健康への最短距離は自分で「料理を作る」ことをモットーに活動してきましたが、AGEをためないためにも、「料理を自分で作る」ことからはじまりまります。
 AGEをためない調理法でまず、理解して頂きたいことは、100度以上の高温で調理をしないことです。なぜなら、AGEはタンパク質を高温で加熱した時にできるからです。
 具体的には、揚げ物、オーブン料理、炒め物などの高温調理はできるだけ避けるほうがよいでしょう。
 高温調理で言えば特に注意したいのが「電子レンジ」による調理です。揚げ物や炒め物は、焦げると見た目でわかるので、注意ができますが、電子レンジは、焼き色がつかないので、つい、加熱しすぎる傾向があります。電子レンジによる調理がそれほど高温になると思っている人は少ないと思いますが、加熱時間によっていくらでも高温になるといってもいいでしょう。そのためか、電子レンジに使えるラップは140度以上になっています。

 揚げ物やオーブン料理は禁止ね!ではなく、繰り返し行わない。または体調のすぐれないときに、高温調理のものは食べたくないのは、カラダのセンサーが働いているからかもしれません。

AGEをためない調理のポイント① ~100度以下で蒸す調理法 低温蒸し~

 和食が世界文化遺産に登録され、世界中に和食レストランが増えています。では、和食はなぜヘルシーな食べ物といえるのか?その答えは、意外に曖昧です。野菜が多いから?発酵食品を使うから?それも正解だと思いますが、それと同時に、和食の調理法は、大半が煮る、蒸す、ゆでる、つまりAGEを作りにくい調理法であることではないかと考えています。
 高温調理を避ける調理法としておすすめは、「低温蒸し」です。100度以下で蒸す調理法ですが、低温スチーミング、ソフトスチーミングといった名前で注目されてきました。
 肉や魚の揚げ物やソテーをするとき、あらかじめ先に低温で蒸しておきます。たとえば、鶏肉のソテーを作る場合も、既に加熱されているので、表面をさっと焼くだけで美味しく調理ができます。
 この調理法だとAGEを抑えながら、美味しさも充分楽しめます。なにより、まとめて蒸してストックすることにより、食材を無駄にせず、劣化することなく使い切ることができるのです。
 慣れるまでは、調理する前に蒸すのがめんどうと思う人が多いのですが、一旦、やりはじめると、調理時間が短くなり、AGEを気にせず、むしろ素材の味を存分に味あうことができるのです。

AGEをためない調理のポイント② ~「使いたい油」と「避けたい油」~

 次にAGEをためない料理法のキーワードが「油」です。油の多いもの、植物油それ自体、AGEが高いので、使い方、選び方には注意が必要です。
 油の選び方は、どんな素材で作られているのかがはっきりとわかる油を選びます。オリーブオイルはオリーブの実から、今、流行のえごま油は、えごま。胡麻油は胡麻ですが、サラダ油は?まさかサラダではなく、ほとんどは、輸入の遺伝子組み換え作物の大豆かトウモロコシ。これは避けたい油の代表です。
 油の使い方もポイントです。できるだけ、高温で使わないことが大切なのですが、そこでおすすめが「コールドスタート」という調理法。これは、鍋を加熱せず、冷たい鍋に油を注いでから火を着ける方法で、油を酸化させない調理法となります。油は繰り返し使うことはおすすめできません。高性能の濾過器でも、油の汚れは取れても酸化物質やAGEは除去することができません。

AGEをためない食材選び

 調理法の次は、AGEを含む食品をなるべくとらないことです。
 AGE=血糖値×持続時間になるので、まずは糖質の高いものを食べ続けないことが重要です。野菜や穀類の糖質も気になるところですが、それより、甘味料の使い方がポイントです。砂糖、米飴、はちみつ、メイプルシロップ、アガペ等の天然の甘味料もとり過ぎには注意が必要です。さらにもっと気をつけるべき甘味は人工の甘味料や異性化糖です。異性化糖は、トウモロコシから作られ、AGEを作るスピードが10倍も速いといわれています。
 お菓子や清涼飲料水は、これらの糖をたっぷり使われていますが、さらに、加工食品のなかの冷凍食品、レトルト食品、缶詰は、高温の調理となりますのでAGEも高いことになります。オーガニック食材を使ったものでも繰り返し使うことは、避けたいです。
 加工食品は便利ですが、やはり、食材を選び、料理を自分で作ることはAGEをためないレシピにつながります。

 次は、AGEを抑える食材をとることも大切です。αリポ酸を含むほうれん草やトマト、人参、ブロッコリーなどの緑黄色野菜をメニューに取り入れましょう。
 野菜のなかでは、スルフォラファンを効率よく含む、ブロッコリースプラウトやスーパースプラウトもおすすめです。生のブロッコリーをスムージーに入れるとかなり青臭く癖があるので、スプラウトを使う方が飲みやすくなります。
 野菜のなかには、糖化を抑える抗糖化効果のある白菜、生姜、カブ。酸味のあるレモン、すだち、柚子も揚げ物やソテー料理に使うとよいでしょう。
 そのほか、大豆やこんにゃく、きのこ類、納豆や山芋などのネバネバ系食材。海藻類もおすすめです。やはり、和食の食材には、AGEを抑えるものが多いこともわかります。変わったところではヤマグミやノニ、サンシュユなどに含まれるイリドイドという成分もAGEを抑える効果があるそうです。

 素材ではないのですが、日々の料理レシピで、一番のおすすめは野菜だし「べジブロス」です。べジブロスは、野菜だしのことですが、野菜の皮や根っこ、ヘタなど捨てるような部位を使って作るのがタカコスタイル。それは、植物に含まれる抗酸化物質ファイトケミカルを多く含んでいるからです。
 とくに、たまねぎの茶色の皮は、ケルスチンを含み、AGEを抑制する働きがあるため、是非、いれましょう。

べジブロスの取り方

【材料】
野菜の皮や根っこ(切れ端を両手でかるく一杯分)
お水(1300cc)
料理酒(少々)
【作り方】
① 鍋にお水と野菜の皮や切れ端、料理酒をいれて、中火から弱火にかけます。
② そのままコトコトと蓋をしないで煮ます。
③ ざるで漉したらべジブロスの完成。冷蔵庫保存で5日間、冷凍で1ヶ月で使いきります。


 べジブロスの使い方は、そのままお茶がわりに飲むのもよいですが、野菜だしとして料理に活用します。味にくせがないので、和食からイタリアン、中華とどんな調理にも使えるところもうれしいですね。
 使い方は、レシピで水を使うところは、べジブロスに差し替えます。
 まずは、ごはんをべジブロスで炊いてみる。味噌汁をべジブロスで作ってみる。
 おでんや煮物、おひたしなどの和食はもちろんですが、リゾットやカレー、スープなどもべジブロスを使うことで、美味しさもアップ、AGEも抑えてくれます。ぜひご活用ください。

 AGEをいかにためずに見た目も体のなかも若々しく保つか、それは日々の口にする食事にかかっています。それもちょっとした工夫でAGEを減らすことができるのです。みなさまもウエルエイジングで、美しく歳を重ねていきましょう。

AGEをためない料理レシピ 揚げない鶏の唐揚げ 〜低温蒸しを使って〜

【材料】
鶏のモモ肉(1枚)
市販の唐揚げ粉(適宜)
なたねサラダ油(大さじ2)

【作り方】

  1. ① モモ肉を50度洗いして食べやすいサイズに切り、70℃で30分低温スチーミングしておく。
  2. ② 唐揚げ粉をまぶして10分程度おく。
  3. ③ フライパンに油をいれ、②をいれてソテーする。