教えて!AGEのこと

第13回 AGEについて考える日

昭和大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科学部門教授
昭和大学病院附属東病院糖尿病・代謝・内分泌内科診療科長
山岸 昌一 先生

 

 加熱によって「タンパク質」に「糖」が結びつき、焼き目や焦げ色がつく現象は、今からおよそ100年前フランスの化学者により発見され、「メイラード反応」とも呼ばれています。この反応は、食品化学の領域で味や風味に関わる現象として研究されてきましたが、1970年頃からヒトの体にも、いわゆる「糖化」反応が起きることが報告されるようになりました。

人間の体はコラーゲンなどの「タンパク質」からできていますし、ヒトは食事から摂ったエネルギーを糖として利用しています。この二つが体内で反応することにより、糖まみれになり機能が劣化した「タンパク質」ができてきます。この物質の総称が、終末糖化産物、Advanced Glycation End Products、AGEです。

 「タンパク質」のAGE化は、糖尿病や加齢に伴って促進されるだけでなく、食事からもAGEが取り込まれるため、多くの老年病のリスクに関わる物質になるであろうとの予測のもと、1984年に当時、ロックフェラー大学にいたセラミ教授が、加齢を意味するageと語呂を合わせてAGEとネーミングしました。

 その後、たくさんの臨床や実験動物の研究が行われ、AGEが、動脈硬化症、がん、アルツハイマー病、骨粗鬆症、腎臓病、脂肪肝、更年期障害、歯周病、変形性関節症など多岐にわたる老年疾患の発症に関わることが明らかにされていきました。

 さらに最近になり、AGEが見た目にも悪影響を及ぼすことが明らかになってきました。実際、正常な皮膚はコラーゲンにより、その弾力性が維持されていますが、このコラーゲンがAGE化するとお肌のハリやプリプリ感がそこなわれ、シワやたるみができてきます。また、AGEはメラニンの産生も促しますから、シミの原因にもなってしまいます。つまり、お肌にAGEが溜ってくると、老け顔になってしまうのです。

 喫煙者は、一般的にお肌の老化が進みやすく老け顔であることが知られていますが、この現象にタバコに由来する外因性のAGEの取り込みが関与しているわけです。加えて、老け顔のヒトは、心筋梗塞になりやすかったり、寿命が短かったりすることも明らかにされ、見た目と体内の老化が比例的に進む現象に皮膚や内臓に蓄積したAGEが関わっていることが報告されています。紫外線を浴びるとお肌にAGEができやすくなることが知られています。一方、十分な保湿はAGE対策となります。

「AGEについて考える日」を機に食・生活習慣を見直し、見た目も体も若々しい人生を獲得したいものです。