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第14回 小林照子先生インタビュー
肌をくすませない「ひと手間」美容法

海野由利子氏(インタビュー・文)

 
小林照子先生

美容研究家、メイクアップアーティスト、(株)美・ファイン研究所所長、(株)フロムハンド代表取締役社長 [フロムハンド]メイクアップアカデミー学園長、青山ビューティ学院高等部学園長

1935年生 (株)コーセーにて教育、商品開発に取り組み、多くのヒット商品を生み出し、取締役・総合美容研究所長を退任後に独立。現在はトータルビューティのプロの養成、ビューティビジネスのプランニング、コンサルティングなど多岐にわたり活躍。著書は「人を美しくする魔法」(マキノ出版)など多数。




 私は今まで62年、人の肌に触れる美容の仕事を続けてきました。人の肌が年齢とともにどのように変化するのか、どうすれば美しい肌を維持できるのか、どうすればある程度美しさを取り戻せるのか、ということに、この目、この手でずっと向き合ってきました。
 「糖化」について知ったのは数年ほど前だったでしょうか。肌のくすみ・黄ばみは糖化で起こること、医学的な研究がさまざまな分野に活用されていることを知りました。糖化を防ぐ成分を配合した化粧品も発売されていますね。
 お医者様や専門の方々が糖化の原因や予防法を研究、提案されているそうですから、私は自分の専門である、体の外側から行なう「美容法」で、肌の美しさの維持についてお話したいと思います。

 人の肌がだんだん黄ばんでいくことは、経験からわかっていました。それを防ぎたいと考えて、「血流」や「食べ物」が大切なのだと思うようになりました。血液は食べ物から作られているから、まずバランスのいい食事が大切だし、良い食べ物で作られた良い血液は体の末端までめぐらすことが大切です。

 めぐりを助けるために、美容ではマッサージを行いますが、私が何年も前から提唱しているのが、ホットタオルで肌を温めて蒸す、というひと手間です。メイクアップを落とすクレンジングアイテムやマッサージクリームは、どのメーカーのものでもお好きなものを使えばいいのです。
 大切なのはそれらをきちんと「取り去る」こと。温めたタオルを顔全体にのせて蒸すことで、肌は柔らかくなり毛穴は緩み、表面の古い垢もふやかされます。じゅうぶん蒸されたらタオルで顔全体をやさしく拭き取れば、深い汚れまで取り去ることができるのです。この「ホットタオルのひと手間」を長年、習慣として続けている方が何人もいるんです。その方たちの肌はくすみも黄ばみもなく、透明感があってツヤツヤ。毛細血管のめぐりが良くて老廃物もたまらず流れていってるのでしょう。
 人は、時間とともに老けていくことが当たり前。そんな流れの中で肌がくすまず、美しさを「維持」しているというのは、ケアを凄くがんばっている証拠ですよね。私は、化粧品に「美容の一手間」を加えることで、化粧品の効果をより引き出せる、と考えています。それが、ホットタオル。肌を温めて、リラックスさせて、気持ちもゆるんだところで「美容」をするんです。

 化粧品は、どこの何が良いのか、ということを気にされる方は多いですが、大切なのは使い方。特に量です。無駄遣いしないようにと、少しずつ大事に使う方は少なくないでしょう。ですが、化粧品には「適量」というのがあります。美容アドバイスをするときに、その方の使い方を見られれば「もっとたっぷり」とか「少しで良い」とお伝えできますが、一般的に言えるのは「落とすアイテム」はたっぷり使っていただきたい、ということ。だいたいアメリカンチェリー1個ぶんくらい。量が少ないと、メイクは落としにくくなりますし、指のすべりが悪くなるので、マッサージが肌の刺激になってしまいます。

 肌の汚れを取り去った後の「与えるケア」は、肌の状態に合わせます。最近は環境の変化やエアコンの影響で乾燥が進んでいるそうですし、肌に化粧水などをつけても、その瞬間は潤うけれどだんだん乾いてきたりしますね。内側から分泌するものが、あまり期待できなくなる年代だと特に(笑)。
 美容液やクリームは量をケチらず、まずは外箱などの“使い方”に書いてある量をつけてみること。そして、乾いたと感じたときはもう一度つけましょう。たとえば夜のケアを終えて、寝るまでの間に乾いたなと感じたら、また塗るのです。乾燥を感じたらほったらかしにしないことです。
 乾いたまま1日を過ごすということは、肌が日干し状態になるようなもの。つやがなくなってくすみますし、老化も進んでしまいます。洗濯物が乾きやすい日ほど、肌の乾燥には気をつけていただきたい。肌が乾いて突っ張ってると、表情もパリパリ強張りますよね。

 肌の状態はメンタルにも影響します。肌がうるおっている日と乾いてくすんでいる日では気分が違いますね。しっとり柔らかいほうが血行が良くて、女性ホルモンの働きもしっかりしているようで、若いころの自分の意識になりますし、1日中ほがらかでポジティブでいられます。だからくすみのない良い状態の肌って大事なんです。
 美容の本質は、その人を生き生きさせて、明るい方向に引き上げてくれること。いくつになっても日々機嫌よく過ごすため、肌をうるおいで満たす化粧品や美容法は女性への応援。糖化も遠ざけてくれるでしょう。


(インタビュー・文 海野由利子/撮影 長谷川梓)