AGEがお肌のシミの原因に?

紫外線によるシミ形成過程

外見が老けて見える人は、体の中身も老けている可能性がある。

これを裏付けるような興味深い研究結果が2009年に発表されている。これは、南デンマーク大学で老化を専門に研究しているクリステンセン教授らのグループが、世界5大医学雑誌の一つ「British Medical Journal(英国医学雑誌)」に報告したものだ。クリステンセン教授らは、2001年に1826人の双子(70歳以上)を選び、その写真を20人の老年病科勤務の看護師、10人の若い男性教師、11人の高齢の女性に見せ、写真の双子の人物が何歳に「見える」か、年齢を推測するように依頼した。そして、その7年後、双子の生存状況を調査し、以前の質問結果との関連性について検討を行った。調査の結果、2008年には、全体の37%に当たる675人が亡くなっていた。そして、その多くは2001年の年齢推測の際に、老けて見られた双子の方であった。つまり、双子のうち、外見上老けてみられた人の死亡率は、そうではない人より有意に高いこと、しかも、この傾向は実年齢や性別、認知機能や握力など他の加齢と関連する因子で補正しても認められることが見いだされた。


AGEジミ形成過程  さらに、Copenhagen City Heart Studyに参加した40歳以上の10,885人を対象とし、35年間に渡って追跡、調査した結果,見た目の老化サイン(前頭部または頭頂部の脱毛,耳たぶの深い溝、まぶたの黄色腫など)と心筋梗塞の発症率と間に有意な相関関係があることが明らかにされた。見た目の老化サインの集積数が増えるほど、心筋梗塞発症のハザード比が有意に上昇し、年齢や性別、総コレステロール、高血圧、糖尿病、体格指数などの古典的な冠危険因子で補正しても同様な傾向が認められることが報告されている。実際、老化のサインを3〜4個もつ者では、心筋梗塞のリスクが57%、心臓病のリスクが39%上昇するという。また、ニュージランドのダニーデン地区の954名の研究では、老け顔のヒトの老化のスピードが実際に加速していることが明らかにされている。
 加齢の兆候は、一般的には、目尻のしわ、下まぶたのしわ、ほうれい線、口元のたるみ、顔の肉の下垂、こめかみ部分の生え際後退、頭頂部の抜け毛、耳たぶのしわなどで判断されるが、これら老け顔の特徴に終末糖化産物(advanced glycation end products、以下AGE)の蓄積が関わっている可能性が考えられる。実際、健康な日本人を対象として研究では、AGEリーダーで測定した皮膚のAGE値が高いヒトほど老け顔で、利き手の握力が弱いことが報告されている。また、ケラチンのAGE化は、髪のつやをなくしたり、顔のシミやクスミの原因になったりもする。見た目が老けて見える事実は、皮膚だけでなく、体内においてもAGEが溜まってしまっていることを示唆する一徴候なのかもしれない。つまり、AGEの蓄積の亢進が、見た目の老け度と全身の老化度との関連をつなぐ、いわば「老け顔のヒトは早死にする」理由なのかもしれない。